抜き出しと空欄
抜き出し問題
抜き出し問題には隠された任務が⁉
「本文から適切な部分を〇文字で抜き出せ」 抜き出し問題を解くとき、本文をろくに読まないで探し出すのは難しい。すなわち抜き出し問題は、よく読まない生徒に本文を読ませ、適当にざっとしか読まない生徒にも本文を読ませ、試練を与えるためにあるのだ。テスト前なんかに使う「教科書ドリル」には必ず抜出し問題がある。ドリルは、重要な部分を抜き出して埋めたり、時には表になっていたり、関係を示す線が引かれていたり、正しく読ませることが目的だ。
さらにまた、「国語など読まなくても解ける」と豪語する選択肢問題だけは解ける憎らしい生徒も懲らしめるのである。
抜出す問題すなわち探す問題
楽しみの宝探し⁈
抜出し問題は「探す問題」である。解答者は本文の隅々まで探さなくてはならない。あそこにあったなと一発で思い出す場合はいいが、あちこち探して、さらにもう一度読み直すなんてこともある。場合によっては探しているうちに段々と意地になってくまなく探したあげくテストが終了したりする。こんなにも遊べる抜き出し問題は、手軽なクイズに近いし「宝探し」ごっこをするようである。そういうわけか、抜き出し問題が好きな子は多い。出題者も隠すのを面白がっているかもしれない。某中学受験塾の専用テキストや某大学の入試問題などは、そのほとんどが抜き出し問題ばかりで生徒の学習時間を増やしているが、良く考えられている問題は思わぬ解答への道筋があり、楽しくもある。
空欄補充問題
空欄補充問題、俗の呼び名は「穴埋め」。せっかく読んでいるのに虫食いがあるのは忌々しいが、おもしろいもので読みながら脳は勝手に言葉を当てはめている。つまり穴埋めは解答者の直観や考えが先にある。抜き出し問題は本文から探して選んで書き写すが、穴埋めは考え出すのではなく宝探しゲームのようである。楽しい抜き出しに比べて穴埋め問題は、今当てはめないとどうも生活費の赤字の穴を埋めておかないといかん気分になる。
穴埋めも探す問題が多い
穴埋め問題にも本文から探す問題が多い。やはり本文の重要な語句などを探して当てはめさせる。しつこい筆者なら二回も三回も同じことを書くから問題も作りやすかろう。まあ、業界ではこれをキーワードとか呼ぶのではある。
埋めるのと取り出すの
前後の意味内容をつかむ
対応関係をつかむ
もちろん探すだけではない。穴埋め問題の代表といえば、接続詞の問題。(空欄に入るのはどれか。1また 2たとえば 3しかし…)この順接や逆接などを判定するためには、前後の意味を把握しておく必要がある。空欄の前後に書いてある内容の「意味」と「関係」がつかめているか聞いている。
かたや、「抜き出し」の代表といえば多分、指示語の問題。(「それ」が指し示すものを抜き出せ…)これもまた、後へつながるように前の部分を探す前後関係の把握を尋ねているのだし、他によくある「これこれの内容にあたる部分を抜き出す」も「この空欄に言い換えの表現を選ぶ」のも、総じて対応関係が尋ねられるといえる。
問われるものは論理
同意部と対比部、言い換え、たとえ、理由、具体化などを図式化
抜出問題と空欄補充(穴埋)問題で問われるのは、論理や関係の把握、だとも言える。ある語句を探す(あてはめる)ということは、関係をたどっていってその部分と部分のつながりを探し出すことだ。だから、この種類の問題に解答するには、空欄や傍線の前後を読みとって、頭の中でイメージを作り上げて、その上で、そことここが同じだとか反対だとか関係を考えて答えることになる。とくに説明的文章などでは、「対応する箇所」「抽象化して言い換えてまとめている所」「理由が書かれている」など、論のうえで重要な部分を答えさせる問題が多く、対比対照の関係、因果関係、例やたとえの関係、具体と抽象の関係、要点要旨などなどが問われる。イメージの図式が頭の中にあるかどうか試されるのだ。イメージの図式とは先生がよく黒板に書くあれだ。
探し物の優先順位
解答を作っておいてから探す
探すといっても、頭の中に解答を作っておいて、該当部分を探すことが多い。筋をたどる場合もあれば、段落で見当をつける場合もある。紛失物を探すとき優先順位をつけて、引き出しを探してゆくのと同じだ。宝探しの本文捜索は大変でもあるが、面白くもある。頭の中の解答と異なる時、別のパースペクティヴ(視点)の発見もあるのが面白い。かと思えば、全く関係のない所から言葉だけを探す圧倒的悪問もある。
小説、随筆では情景や印象
言葉の意味や副詞などの使い方
よく読んでいるか問うという点で、文学的文章の場合などでは、読んだあとに頭の中にできている情景や心情が設問されることも多く、副詞などの語句、印象やたとえ、因果関係、前後関係、人間関係をとらえてイメージが作れているかどうか、ためされたりもする。頭の中に作られた印象によって自然に作られたイメージや共感的な感性を尋ねられることも多い。共通感覚とも言うべきか。読むことに集中することが欠かせない。